肩
五十肩(癒着性関節包炎)
正式には癒着性関節包炎です。したがってポイントは、関節包の癒着解消です。
原因
副腎系ホルモンのバランス変化が大きな原因です。
更年期性の症状と言えば内科的なものばかりを考えがちですが、痛みの領域にもたくさんあります。
その殆どが加齢性代謝異変より生ずる痛みの疾病です。五十肩はその中でも代表的な疾患に挙げられます。
肩関節は筋肉だけでは動きません。関節包の伸展・収縮が必要です。
肩関節の動きは筋肉の動きによることは言うまでもない事ですが、それだけではなく肩関節内の関節包が伸び縮みしてはじめて動きます。他の関節でも同様です。
では何故肩関節だけが極端な症状を出すかと言えば、ソケット関節ゆえです。
他の関節は靭帯で守られているのでこのメカニズムは多少アバウトでも関節に及ぶ危険は回避できます。
しかしソケット関節である肩関節は、100パーセント周りの筋肉によって守られています。
したがって周りの筋肉のいずれかの内的状況に大きな変化が起きれば関節包は過敏に反応します。
どう反応するかと言えば、関節可動域を狭くすることにより周囲筋の動きを制限しょうとします。
これらは全て関節の安全を計ろうとして過剰になりすぎた結果、起きたことです。
このような行き過ぎは、やがて自然に是正されます。それゆえ放っておいても自然に治ります。
しかし自然に任せたのでは、その間が辛いし又、我慢するには期間も長過ぎます。
発症の背景や原因で述べたように五十肩は周りの筋肉が単純に硬縮しているわけではなく、関節包の癒着により制限がかかっています。
そしてこの制限は二つの方法でなされます。
一つは上腕骨頭の前方への移動、もう一つは上肢帯筋群の閾値低下です。
ここで言う閾値とは、上肢帯筋群がそれぞれ脱分極する時、つまり筋が動く時、神経上は例外なく全か無の法則に基づく神経よりの筋支配が起きますが、五十肩の患者の上肢帯筋群はいずれかの筋でそれを決定する電位値(閾値)が下がっています。
これにより本来オーバーシュートしないはずの刺激が結果的に閾上刺激となり神経インパルス(脱分極回数)のシュート回数が増えます。
つまりわずかな刺激での筋緊張の継続状態であり、言い変えればシナプス遅延性の速まりであり、具体的現象で言えば痛みの発生です。五十肩はこのようにして可動制限がかけられています。
施術法
筋や神経のフィードバック制御のメカニズムに乗ったものでなければ効果は出ません。
例えば筋はたとえ微弱な刺激であっても筋紡錘や腱紡錘などいわゆる固有受容器を通れば、刺激は正確に中枢へ伝わります。
副腎皮質系のホルモンにインパクトをかけるには微弱な刺激で十分です。
五十肩は進行性の疾患ですので、進行の真っ只中にある場合は進行を止めるのに数回は要しますが、進行が止まってからは数回で大幅に改善します。
四十肩(肩関節硬縮症)
この疾患の発症の背景は、原発疾患ではなく、類症として発症するものです。
例えば五十肩だと本症は関節包の収縮かつ癒着であり、四十肩だと関節包の伸展障害です。
又、上腕二頭筋腱炎など、いわゆる肩関節周囲炎も同様に肩関節硬縮を発症させる場合が結構ありますが、あくまでも本症は上腕二頭筋腱の損傷です。
本症の早期治癒が出来なかったための付け足し発症です。
では何がそうさせたかですが、犯人は三角筋です。
三角筋は肩甲棘部、鎖骨部、肩峰部の三部構成になっており支配神経は腋窩神経であり、この神経は腕神経叢から分岐している三本の神経の中である後神経束から分岐したものです。
この神経は上肢帯筋群のストレスセンサーを担っています。それはこの神経の位置する処に由来しています。
なぜならば腕神経叢領域で発生する全ての異変は必然的に腋窩神経につながり、その結果この神経の支配筋である三角筋に収縮と閾値低下を発生させ、さらに萎縮へと向かわせます。
これが肩関節硬縮の発症背景です。
施術
この疾患の解消は、とにかく三角筋の筋機能を回復させることに尽きます。
頸部症候群(頸肩痛を伴う肩凝り症)
この疾患の定義は肩から首にかけて不快な痛みを伴いながら、さらに首の可動制限が加わっている肩凝りです。
単純な肩凝りは筋中での局所電解質の移動が妨げられ、それに付帯し発生した末梢血管の過度な収縮、それによる乳酸の取り込み不全などを背景とした筋の凝りが起きている状態ですが、本症では、その状態がさらに進み腕の動きや首の動きで、腕や首に強い痛みを発生させる症状を取り上げます。
この段階の筋は、もはや凝りではなく硬縮です。おもに大小菱形筋や肩甲拳筋に硬縮が多発します。
その結果、第一次的には肩甲骨の動きが阻害され、肩甲骨が動かなければならないような時、つまり腕や首を動かしたりする時、肩甲骨が必要範囲の動きの連動をしないがため、これらの部位に筋性の痛みを発したり、さらに多シナプス運動反射の形成が阻害され、筋の協調障害が起きたりします。
こうなると首に本格的な可動制限がかかります。それらの原因を作る肩凝りは筋原性や神経原性による交感神経活性で、自律神経原性ではあまりこのような事態には至りません。
発症の背景
この疾患はもともと肩凝りから来るもので、言うなれば慢性肩凝りの進化したものです。
従って発症の背景を述べる場合は先ず肩凝りの説明から入らねばなりません。
肩凝りは交感神経の緊張から発生します。
交感神経はγ‐SD運動ニューロンで知覚運動神経を支配しています。
このニューロンは知覚運動神経の最末梢である無髄遊離神経に強くつながっています。(肩部や頭部を構成する筋群では神経点の分布をなしており、他の部位のようにラインを曳いていないのが特徴です。)従って交感神経が緊張するとこの遊離神経にいち早くそれが伝わりこの神経点の緊張を招きます。
この神経点は感覚性に富んでおり、そうなれば有髄知覚神経の緊張を誘います。
そして知覚神経の緊張は局所電解質の移動を妨げ筋の緊張を発生させます。この状態が永く続くと今度は運動神経の緊張を発生させます。
これらが途切れることなく循環すると、それにフィードバックする形で筋の硬縮が習慣性を持ちます。
この結果症状説明にあったような状況になります。
肩凝りを発症させるための交感神経活性は、入り口が三つあります。
1、筋原性
筋原性は腕や肩の筋肉を使い過ぎた時に発症させます。
2、神経原性
神経原性とは筋に対する何らかの圧迫要因が存在することです。
例えば頸椎での骨棘などが代表的なものです。
3、自律神経原性
自律神経原性とは精神的ストレスが代表的ですが、最近ではパソコンなど、OA機器を過度に使用することから起こるテクノストレスなどもありますが、これは副交感神経系より発しており、本症とは少し異なるタイプの傷病性肩凝りを誘発します。
もともと自律神経原性で本症の問題は起きづらいものです本症はその殆どが筋原性もしくは神経原性が入り口です。
施術上のポイント
この疾患への治療は先ず肩甲骨の動きを回復させることから始まります。
従って多角的に肩関節を筋の運動反射弓に沿って動かしていきます。
その上で局所電解質の移動を回復させるようにそれぞれの筋を効果的に整復しなければなりません。
さらに肩甲骨と腕、或いは首との関係を肩甲背神経や肩甲上神経の支配関係からも整合しなければなりません。
特に神経原性ではその原因の殆どが骨棘の形成ですから、頸椎のどの部分に端を発しているかの見極めが大事です。
そしてそれらに留意し治療を行わねばなりません。
胸部出口症候群(小胸筋症候群)
原因
胸郭出口症候群は上肢に抜ける神経の出口が小胸筋の硬縮により阻害され、それがために上肢に強い脱力と痺れを発する症状で専ら女性に多発する疾患です。
この症状の大きな特長は、程度の差は多少あるものの、両上肢にほぼ同時に症状が出ることです。
頚椎に問題を有す疾患は頚椎症の中期以降を別として、多くの場合通常片上肢に症状を出します。
特に神経症状はその傾向が顕著です。しかし、この症状ではそれは希で、初期のころから両上肢に症状を出します。
この症状の最初は強い慢性肩凝りから始まります。
次に両腕のだるさ、そして最後が両手掌部の痺れと痛みです。
又、握力はこの時点では、かなり低下しています。
この症状は進行性のもので、中期以降になると、多くの場合、手根管症候群と合併します。
それゆえこの段階で治癒せしめることが重要です。
発症の背景
胸郭出口症候群は、猫背、なで肩、もしくは、イカリ肩の女性に多発します。
発症の引金は小胸筋の硬縮です。
女性は乳房が存在しますので、ある年齢になるとそれが小胸筋に継続的な等尺圧をかけるようになります。
通常は肩凝り程度で済むのですが、先程の体型の場合は圧迫の度合いが大きくなり、その結果、いったん硬縮すると小胸筋の休まる姿勢がなくなります。
又、これは肩凝り発症原因の一つである筋原性の要因でもあり、それゆえ慢性的肩凝りを有す患者も多く、それが又一段と症状の進行を促進させます。
施術について
この症状に対する施術は神経レベルの程度を意識しながら行う必要があります。つまり胸郭出口の緩み具合と上肢の神経群の賦活具合とバランスを取りながら行う必要があります。
治療院情報
ペインオフィスカスガ山村院
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